アメリカ旅客鉄道史おまけ(雑談と掲示板) 作者のアメリカ鉄道雑談

インドの新幹線計画
2013年3月12日

  インド、日本の新幹線採用…首脳会談で合意へ

  上の記事にあれこれコメントしようと覗いてみたら、やや『◇新幹線の売り込みを考える』、というところで私の記事へのリンクが載っているではないか。最近書いたマレーシア編ではなくて、昔のベトナム編のほう、というのがやや気になるが、ボリュームも内容の面白さもベトナム編のほうが面白いので、まあ順当な結果というところか。

  相も変わらず私のベトナムの新幹線に対する意見は「やめておいた方がよい」(絶対的需要の低さと、どう高速運転しても飛行機に後塵を拝すハノイ〜ホーチミンへの需要の集中といった理由から)「貨物新線としての建設は有望」、というものであるが、インドに関しては条件によっては建設しても良いかも?というマレーシアとほぼ同じ意見である。
  ただし、気をつけなければいけないのは、インドが資金調達をしてくれるわけではないという点である。インドの国家予算は日本円で15兆円程度、人口の事を考えると政府からの援助はマレーシア以上に期待できないし、インドの信用力で借金をする事も難しい、すなわち、日本がお金を借りて建設し、運賃収入から返せる分だけ返してもらう・・・という形になる。マレーシアと同じで、収入を得ようとするなら回収できる運賃水準は日本の数分の1となる(経済力ではマレーシアより不利だが、人口が多い、競合交通機関が少ないという面ではマレーシアより有利)ので、そういった状況で上手くそろばんをはじけるのかが課題になる。

  技術的な問題も勿論存在する。日本のシステムで、とはいうものの、ここでも独立新線方式は不可で、在来線と相互直通運転をするようなシステムが求められる。というわけで採用される軌道幅は、おそらく1668ミリ。信号についても、東欧や中国で採用されている新幹線式の車内信号と、通常の信号を混在出来るようなシステムが求められるようになると考えられる。まあ、このあたりは交渉次第(在来線が過密気味なので、独立新線を作る方式にも優位性がないわけではなく、その種の主張が通る可能性はある)で、新在直通運転のノウハウを持ち、自社向けに設計した車両が中国で安定的に使われているという実績が図らずして出来上がってしまっているJR東日本が参画しているという事は、どう転んでも対応できるような準備をしている証拠であるとおもわれるが・・・。
  インドは結構人口密度が高い国であり、また民主主義が徹底している国でもある。そういう意味では、車両技術よりは用地買収が難関になる可能性もある。そのあたりでは、日本のノウハウは生かせるのだろうか?


<補足>
というわけで、各国の高速鉄道計画への日本の参画に対する私の意見をまとめると

アメリカ:
  北東回廊の高速化事業などに部分的に日本の技術(軌道、車両)は導入済み、それに携わった経験者も当然のことながら各界で活躍しているので、その意見をまとめると話は円滑に進むのでは。今でも世界一の鉄道総延長を誇り、質を別とすれば鉄道路線網は飽和状態。カリフォルニアを別とすると、若干改良した在来線を160km程度で高速運行できる振り子式気動車による、表定速度120km程度の高速列車を混雑空港に起因する航空機の遅延や道路渋滞が多発するボトルネックを持っている中距離都市間向けに提案した方が良いような気がする。
ヨーロッパ:
  日立のイギリスでの事例を除けば、やるべき、という話は全くないので、逆に勝負に打つべきでは、と思ったりもする。鉄道事業の参入自由化により、日本の鉄道会社も理屈上は参入可能なケースが増えている。「競争相手が多いので問題外」となっているような気がするが、イギリスやヨーロッパの地域路線に試しに採算度外視で参入して、ヨーロッパのやり方を研究してもいいのでは、と思ったりもする。そのうえで、東欧方面での参入を狙うのはそう間違いでもないような気がする。
東南アジア:
  比較的経済発展もしているので、今後有望になるとは思うが、需要もそんなに多くもないし、資金も潤沢ではない。「お金は日本が保証人になって借りてきてくれ、勿論、運賃収入で返すつもりだが、見込み外れの分に関しては、援助だと思って肩代わりしてくれ」という話である。マレーシアのクアラルンプールとシンガポールを結ぶ路線(ここもLCCと激安高速バスとの激しい競争にさらされている事に留意)以外除く路線に関しては、作るのであれば、中国と貨物の直通運転をする規格で建設したほうが良いように思う。


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2013年3月12日作成