アメリカ旅客鉄道史おまけ(雑談と掲示板) 作者のアメリカ鉄道雑談

○飲酒運転と公共交通
2006/9/17


 飲酒運転が問題になっている。
 ネット上(http://www.sonpo.or.jp/business/library/public/pdf/yj216_04.pdf)に転がっていた論文では1980年代から90年代にかけて飲酒運転による事故件数が1.5倍に増加し、その後減少していない。論文によれば、飲酒運転の基準以上のアルコール濃度で事故を起こした件数は減り、それ以下のレベルでの事故が多くなっているというから、もしかしたら「事故を恐れて控えめに飲んで自動車にのったが、やはり注意力低下で事故」というパターンが増えているのかもしれない(事故後のアルコールチェックが厳しくなっているのかもしれないが)。
  飲酒運転というと、公共交通に関心を持つ人間としては、

 『酒を飲んだら公共交通を利用しましょう』

 的キャンペーンが果たして有効なのかどうかに関心を持ってしまう。
 残念ながら地方都市ではバスなどの公共交通は壊滅状態。とりわけ、夜9時以降のバスは皆無といっていい。公共交通に乗ろうにも乗って帰れないのである。
 

  問題は奥深い。なぜ公共交通がなくなったのか?規制緩和や民営化を批判する人も多いが、問題の根幹は郊外への人口の拡散である。

  『昔は赤字でもバスが経営されていたが、規制緩和でそういったバスは廃止された』というのは眉唾(実際は「昔はほとんどのバス路線は黒字だったが、規制緩和が行われた21世紀初頭には乗客減で赤字になっていた」が真相である)なのだが、『昔は人は街中に寄り添って住んでいたが、時を経てばらばらに住むようになった』というのは真実である。その証拠が上のグラフで、人口密度4000人/km2以上の地域(人口集中地区)の平均人口密度を都道府県ごとに集計したものである。人口密度4000人/km2以上の地域の中には、人口密度8000人/km2とか2万人/km2といった人口密度が特に高い地域があり、そういった地域の有無で人口集中地区の人口密度というのは変わってくるのであるが、1970年以降、そういった地域の全体に占める割合は少なくなり都市域でも拡散して居住するようになってしまっているのである。地方都市においては都心地域(人口30〜60万都市で半径2〜4km)での人口減少が著しく、外縁地域での人口増が著しい。そういった地域にはバスはない。近年の廃止も多少は関係するが、黄金時代のバス路線網が残っていたとしても、到底カバーできない範囲がほとんどである。こういった地域の交通手段は自動車で、酒を飲んだら飲酒運転という事になってしまう。

  公共交通の役割を研究する側としては、公共交通を維持する理由として、「職場帰りに一杯」という習慣の存在を挙げたくなるのだが、私は別の見解も持っている。都市が自動車利用に向いた構造になってきているという事は、文化も自動車向きになっていくという事である。日本でも「帰りがけに一杯」という習慣はなくなり、アメリカ的に家族同伴で酒なし、もしくは強い酒が入らないホームパーティーが主流という文化が生じるのかもと個人的には思ってしまうのだがいかがだろうか。

 自動車を運転する必要があるのになぜか飲み会、という時に個人的におすすめしたいのは低アルコールビール。私は自動車免許は持っていないのだが、本年4月より金曜8時からという中途半端な時間に語学(ドイツ語)講座に通いはじめ、少人数、先生との会話レッスンありでとても飲酒後には行けないが、一杯やる時間程度はあるという環境なので、金曜に懇親会がある際には低アルコールビールで通すようになってしまったのである。私は酒に関しては凝り性で、当初は酸味を感じたりしてなかなか飲みつけなかったのだが、慣れるとなかなか美味しい。普通のビールと同じビンやジョッキで出すとか、全ての銘柄に関してアルコール入りとアルコール無しを用意しておいて車の運転手とおぼしき人物には全てアルコール無しを出すとかいう工夫があれば尚良いのであるが・・・。もっとも、低アルコールといってもアルコールは含まれていて、飲んでいて酔いを感じないわけではない(私は持っている酵素の働きが中途半端なのか、一口飲んでも一瓶空けても同じように酔ってしまうタイプで、ちょっとしたアルコールには敏感だったりもする)ので、飲んだ後の運転には気をつけたほうがいいというのは言うまでもないのだが。

「アメリカ旅客鉄道史+α」トップへ

「作者のアメリカ鉄道雑談」表紙へ