・電鉄の正統後継者(2002年3月14日)

 古今東西の電鉄会社の中で世界最大の会社は?アメリカの巨大電鉄会社、パシフィック電鉄やオハイオ電鉄は当時世界最大であったと思われるが、現代の会社を含めても良いとなると、東日本旅客鉄道(JR東日本)の名前が思い浮かぶ。勿論JR東日本は国鉄を前身としていて、当初から電化されていた区間は少ない、非電化区間もある、等の定義上の問題があるが、旅客主体、電車主体、都市間連絡というインターアーバンの定義からするとそんなに誤りでもないような気がする。日本の電車化は国鉄時代からの伝統だが、客車列車をつぶして電車に置き換えたり、貨物部門を別会社化した事などを見ると、JRはインターアーバン化しているといえなくもない。
 ヨーロッパなどを中心に電化区間が長い国はあるが、アメリカのインターアーバンで確立された動力分散型の車両を用いて、都市間でも1時間に1本ほどの運行を行うという電車運行システムが根づいたの国は日本をおいて他にない。第二次世界大戦で遅れをとったが、電車の技術は戦前に世界最高水準に達した。「蒸気機関車の興亡」という本を書いた齋藤晃氏は、日本の蒸気機関車について技術の立ち遅れや模倣を批判したが、電気鉄道に関しては、標準軌でアメリカのハイスピードインターバンを上回る規格で建設された路線もあり、その上、資金も潤沢だったという好条件に恵まれて、200馬力モーターと言うアメリカにはなかった巨大モーターを使用した高性能電車、新京阪デイ100、阪和モタ300、参急2200などの名車が次々と生み出されたのである。第二次世界大戦の痛手は大きく、高性能電車の導入はアメリカに16年も送れてしまったが、アメリカにおける高性能電車の活躍の場が限られたのに対し、日本では順調に発展、1964年には新幹線と言う究極の電車が登場する。
 もう一つ日本の電鉄を評価するとしたら土木技術と運転手法があるのであるが、褒めてばかりいてもしょうがないので若干の批判をしよう、日本の鉄道で最後まで模倣が続いたもの、それはデザインである。良く小田急のロマンスカーNSE車の運転台がセッテベロを真似たものだと言う話しが出てくるが、その前身、SE車もアメリカのノースショアー線の電車「エレクトロライナー」に何となく似ている。新幹線は、プルマン社が製作しユニオンパシフィック鉄道の「シティ・オブ・ポートランド」などで活躍した高速ディーゼルカーM10001に似ているし、ボンネットタイプの在来線特急はその後継者のM10002に似ているような似ていないような・・・。国鉄の車両も機能美をむねとしていたわけだが、JRになってよりいっそうの効率性を追求したり、快適性を追及した車両が登場し、ようやっと(多分無意識の)模倣から脱却した車両が登場した。代表的な近距離輸送用電車であるE231系や223系は使い勝手や快適性に関する意見は色々あるだろうが、どこかの車両の模倣でないことは確かなような気がする。



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