アメリカ旅客鉄道史おまけ(雑談と掲示板) 作者のアメリカ鉄道雑談

○公共サービスの民営化について思う
2007/5/15
 酒の肴に豚バラ肉の天ぷらとか言う不健康なものを揚げていると(中性脂肪とコレステロールが異常に低いのが健康上の問題というメタボリックとは無縁の体質なので・・・)、「刑務所を民営化」というニュースが飛び込んできた。警備会社などに経営を任せ、効率的な経営を目指すという話であった。
  続いて出てくるのはハローワークの民営化、ニュース特集の編集方針は民営化に賛成というもので、それに反対する厚生労働省をあれこれ批判する。基調は「民営化して効率化を図る」。見ているうちになんだか背中が痒くなってきた・・・。

  郵政民営化をはじめとして近年公共サービスの民営化議論が盛んであるが、私は一連の議論を好ましく思っていない(職務上民営化を進めなくてはいけない立場の人でこのHPを眺めている人は政治主張をうっとうしく感じるかもしれないが、「雑談」なのでご容赦を)。「○○省」が「○○株式会社」になることで経営が効率的になるという論理が好きではないのである。
  大体、民営化による効率化というとなんとなく納得してしまうが、その論理はきちんと分析されていない。経済理論に沿っていえば、「民間には競争があり、役所には競争がない」という事になるのだろうが、そもそも役所が独占している公共サービスは複数企業に競争させるといった事が難しく、民営化しても独占経営になってしまって効率的な経営にならないから、情報公開や議会を通じての監視などがまだしもやりやすい役所にやらしているものなのである。この手のサービスを民営化しても、独占的な経営になってしまい効率化によるサービス向上は望めないであろう。
IRTのライバルBRTのビジネスカーの写真
何で都市鉄道で幹部専用車が必要になるんだかという感じもするのだが、
他都市からの視察者の接待には使えたに違いない
なお、この写真、日本からの視察者を紹介した記事のもので、写っているのは
南海鉄道と山陽鉄道からの視察者である。この視察は1907年の南海電鉄の
電化に影響を与えたと言いたいが、実際のところどうだったのかは不明

出典:Street Railway Journal 1902 Jan. p25
  もう一つ気になるのは、「公共サービスに順ずるものだから民間会社もおとなしめに経営してくれるだろう」という事を暗に期待している点。民営化するという事は、規制がなければ企業はとことんまで自らの利潤を追求する事になる。郵政などは外資に買収されて、その際重役は年収100億円とかになってしまったりする可能性も考えられるのだが、民営化に賛成したということはそれを黙って見守らなければならない(まあ、文句をつけても良いが)。その点アメリカは律儀で、1904年にニューヨークの地下鉄を開業させた民間会社IRT(インターボロ・ラピッド・トランジット)はニューヨーク市の金で路線を建設しておきながら、他の民間鉄道会社と同様豪華車両「プライベート・カー」を用意し、社長や重役はそれに乗って我が物顔で路線を巡回していたという。公営だったら市民に還元される儲かりすぎてしまった利潤を企業に持っていかれるというのは公共サービスの民営化とかPFIの一種のリスクなのだが、これがあまり理解されていないのは痛いところ。最初の契約でそういった傍若無人な行動はできないようにすればいいじゃないか、という話になるのだが、あれこれ規制すると民間の活力はだんだんそがれていく。だから公営が効率的になるという話ではなく、公営も民間も同じという話になってくるのだが、同じであれば、他の公共サービスと連携を取った施策をとったりといった別の意味での効率化を図る事も可能になる。このあたりの議論がないのは何とも残念なところ。

  私が思うに、現在の公共サービスの問題点は、以前銀行業で言われていた「ティッシュ1つ配るにも中央官庁の許可がいる」という役所仕事の硬さにある。だから、民間的な人事制度の導入とか、細かい運営上の工夫とかで決済を取らなくても済むようにするとか、そういった工夫なのだが(予算の余りの繰越も認めよと言いたいのだが、これは日本の公共財政の根幹にかかわるので保留にしておく)、そういった話は余り出てこない。現在の民営化のメリットというのは、そういった決済や意思決定の効率化にあるのだが、先ほど記したような民営化のリスクを考えれば、公営の範囲内での効率化を図るという方向性も考えられと思うのだがどうであろうか?
LAX(ロサンゼルス国際空港)で撮影したサンタモニカ市バスの写真
サンタモニカ市バスはサンタモニカ市の現業部門であるが、車内に張ってあった運転手の採用条件
は「笑顔で応対できること」。○クドナルドじゃあるまいし・・・といった感じだが、こののりで市バスを経営
できたら民間なみ経営もかのうなのではないだろうか?右のロサンゼルス郡交通局のトランジットモール
行きバスも怪しいが、トランジットモールとはロングビーチのトランジットモールのこと。


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