アメリカ旅客鉄道史実地見聞録アメリカ旅行記>(5)ウィスコンシン州にて

(5)ウィスコンシン州にて
 
本社ビルが建築遺産であるラシンのSCジョンソン

 何かがおかしい事に気付いたのはようやっとこの頃であった。

  中西部は蒸し暑かったが、風景という点に関しては前年に訪れたフランスの片田舎もかくやという感じで、ロサンゼルスが太刀打ちできるものではなかった。どこまでも広がる平原に畑、そして住宅・・・何かがおかしい。






  ・・・綺麗すぎる!!
  皮肉な事に、どこもそうなのである。
  この後の旅行を通じてそうだったのであるが、このアメリカという国には、日本の公団住宅のような、いかにも即席で作りました、という安普請のコンクリートの外壁そのままの住宅、マッチ箱のような安普請の建売住宅というものが存在しない。この次のアメリカ行きで知人にワシントン郊外を案内してもらった時に見た郊外に立ち並ぶコンドミニアム(建売マンション)は日本の高級マンションレベルであったが、安っぽくてもそのレベルである。勿論、スラム街というものはあり、実際ロサンゼルスではじっくり観察してしまったし、この後シカゴ近郊や2006年度のフィラデルフィア行きでも見物することになるのだが、そういったものは「1世紀前には中級や高級だった建物」の名残なのである。

  住宅地に緑が多いのも印象的であった。レイチェル・カーソンの「沈黙の春」のイメージから、自然破壊が進んだイメージがあったのだが、住宅地は木々に囲まれていて、昼間はリスや野ウサギに遭遇し、夕刻には蛍が舞うという恐ろしく幻想的な光景を目の当たりにしてしまった。普通の一戸建て住宅でも宅地が非常に広く、日本の郊外型住宅に比べて緑の占める割合が大きいからであろう。空中写真などから見るとスプロール化が進んでいて、元の自然からの変化はおおきいのであるが。

  私がお世話になった知人宅の暮らしも実に優雅であった。優雅だが別に贅沢ではないというのがポイントであって、こじんまりとしているが、居心地の良さそうな家を構えて、奥さんは裁縫やボランティア、旦那さんは生物学者で研究職の仕事に勤しみ、食事は日本の感覚からすれば質素、食後は外を散歩してのんびり暮らしている。アメリカというのは豊かな生活への欲望も大きい国と聞いていたので意外な感じであった。もっとも、知人宅の旦那さん奥さんは夫婦ともに超一流大学出身で、末っ子も大学進学が決まったところだから、学歴とか出世とかにこだわりを持たずにすんだところもあるのかもしれない。こんな国の環境負荷が高いというのは意外な感じであるが、質素といっても食事には牛肉がふんだんに使われ、住宅地だというのに徒歩圏内に商店がなく、何をするにも車が不可欠であるというところが問題の根源らしい。旦那さんは生物学者だけに、そのあたりの問題にも詳しく「ガソリンに1ガロンあたり5ドル課税すべきだ」というのが自説との事だったが、その話を聞いた奥さんの方の母親は「5ドルもかかったら大変よ(この子、相変わらず変な事言うのねえ、といった感じで)」と呆れていた。

  知人宅への滞在はホームステイというには短く、3泊であったが、こんなわけで、アメリカを学ぶ上では貴重な経験となった。
日曜日、教会(私も異教徒ながらついていきました・・・でも、私以外にも夫婦や親類間で宗派が違うのか話は聞いても
儀式には参加しないという人が結構いて違和感は感じなかった)の帰りに向かったのはミルウォーキー。ダウンタウン
の一角は結構綺麗な建物があっていい感じなのだが

ミルウォーキーのダウンタウンは高速道路だらけで殺風景
自動車利用を前提とすると低密度、駐車場ばかりになり、移動距離からいっても治安からいっても
歩ける街ではなくなってしまう。

ところどころにある風格のある建物。公共交通優先、高密度の街づくりが行われていたらヨーロッパ
風の街になっていたのではと思ってしまうのだが。ミルウォーキーは高速電車網の発展が著しかった
街だったのでその可能性はあったのだが。

↑ 美しかったであろう街、ミルウォーキーを想像してしまうのは、立派な教会が多いからである。
道路脇に建っているのを目撃したのは4箇所、写真は検分録表紙のものを含めて3箇所を撮影
しているので町全体ではかなりの数があるのだろう。高速道路だらけになる前は町並みもかなり
↓ 美しかったのでは?と想像してしまうわけである。

アメリカ旅客鉄道史実地見聞録アメリカ旅行記>(5)ウィスコンシン州にて

2007年3月25日作成