アメリカ旅客鉄道史おまけ(雑談と掲示板) 作者のアメリカ鉄道雑談

ここが変だよ『アメリカ旅客鉄道史』
2007/3/13

「テレホート・インディアナポリス東部電鉄」じゃ駄目?

 このHP、「アメリカの電鉄産業についての知識がネット界に広まって、アメリカ型鉄道愛好家が増えて、ついでに言えば2chからの変な批判も増えて」という事を期待しながら作ったものであるが、開設4年にして期待は実現した。といってもあんまりアメリカ型鉄道ファンの数の増加には寄与せず、後者のほうだけという事になるが。
 結論をいうと、サイト批判は大いにやっていただけたほうが有り難い。勿論変な中傷をしたり、自宅住所や(面会お断りというわけではなく、暇なときにメールでも頂けたらお茶くらいは出しますが、ちなみに京都在住です)、私が某所で好物のシュークリームやタイ焼きをかじりながらチャリンコに乗っている写真をネット上で晒されたりとか、話し言葉でメール(メールはやはり手紙の一種としてみたほうがいいでしょう)とかいうのは勘弁してほしいのであるが、ここがこうだったらいいという建設的な意見は貴重だし、サイト運営の参考にしたいと考えているからである。といっても筆者も人の子、2ch語で数千件とかなるとさすがになえてしまうが、処理可能なレベルである現状なら問題はない。

 批判のうち、いくつかの問題については弁明しておく必要があろう。批判は「デザイン」「鉄道会社名の訳出」が中心であるが。

 デザイン・・・具体的な情報ギボンヌ

 鉄道会社名の訳出・・・
 痛いところをつかれてしまった。わがHP、強引に日本語化しているものが多く、代表例はこんな感じである。

 Pacific Electric Railway・・・パシフィック電鉄(1)
 Terre Haute, Indianapolis & Eastern Traction・・・テレホート・インディアナポリス東部電鉄(2)
 Union Traction Company of Indiana・・・インディアナ・ユニオン電鉄(3)
 Michigan United Railway・・・ミシガン・ユナイテッド電鉄(4)
 Illinois Traction/Illinois Terminal Railroad・・・イリノイ電鉄(5)

 このうち(4)のミシガン・ユナイテッド電鉄は、ミシガン・ユナイテッド鉄道と書いたつもりのものが「電鉄」となっているので論外、すぐ修正予定(デトロイト・ユナイテッド鉄道も同様)で、また、英語名が併記されていないと再検索の際不便なので改善予定としたい。
 難しいのはElectric Railway/Traction→電鉄との訳出で、日本の私鉄、しかも戦前の関西私鉄のような洗練された私鉄ではなく、もっと泥臭い電鉄会社のイメージを与えてそれで、日米間の違いを意識しないでもらおう、という意図をもってやっているものであるから、意図どおりに事が運ぶと、「カリフォルニアに電鉄とは泥臭くてけしからん」という批判が出てきて当然という事になる。また、現役のエネルギー供給会社でカリフォルニアの電力危機で悪名高いパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック区別して電気鉄道を経営しているという事を素人向けに宣伝するには都合が良く、だから映画「ロジャーラビット」の字幕等でも使われているのであるが
(←といおうと思ったら映画では「Red Car」を「パシフィック鉄道」と訳していた・・・ポールが2本とも上がっている電車を走らせる映画だからご愛嬌だが)、昔から使われてきたある程度知識のあるファンにとっては、過去の使用実績を別としても軽快で日本の私鉄との違いを印象を与える「パシフィック・エレクトリック」呼称がいいというのは理解できる。「一般向け・・・電鉄路線」は保持したいが、わがHPが一般向けかどうかと言うとなかなか難しいところもあるので、対応を検討したい。
 訳出問題には初期に作成した記事には電鉄部分以外も中途半端に訳しているという問題もある。(2)(4)あたりの話である
我ながらダサいので修正してもいいかなという気になっているが、ぼちぼちやっていきたいと思う。
 この他、Traction=電鉄はイヤという意見もありそうだが・・・気分的には電鉄趣味学国際シンポジウムでも開きたいところ。多少の報告位なら引き受けるので誰か企画運営やっていただけません(ってこれはすごい我侭?)。

足踏み式可変加速制御の路面電車(トロントにて)
  さて、わがHPの内容が不十分なためか、掲示板ではPEのネタはすぐに終わり(実はPEは大幅な更新を企画していて、その原稿を1年近く放置しているという話もある、更新見込みがたったら告知したい)、PCC車のネタに移っている。そこの話も、我がHPの批判と同じくおおむね議論は間違ってはいないと思うのだが、PCCの加速装置がVR(可変加速)制御であるという視点が入っていないのが惜しいと言えば惜しいところ。日本の自動加速制御の電車(普通の電車)は加速度3.0km/s/sと設計されてしまうと、加速度2.0km/s/sのまま加速するとか、加速度2.5km/s/sのまま加速するという事ができない(1ノッチを上手く使うことである程度の調整は可能であるが)。だから路面電車では直接制御が好まれたのだが、PCC車は間接制御ながら加速度の調節がアクセルペダルの踏み方で調整できたのである。だから、通常は最大加速を行う時間が短時間であることを前提に、加速度7.0km/s/sとかいう驚異的な加速度を設定できたわけである。この制御装置、日本では都電の5501の他、広島電鉄のドルトムント市電出身の70系で採用されている程度で、間接式の可変加速制御と言う概念そのものが日本では知られていない(70系は「手動式」となっている)。
  とはいえ、この制御装置、進段(抵抗の切り替え)速度が自由に変えられ、その刻みも異常に細かいという代物であるから、現代ならともかく、
補修用の工具の精度などが日米で全く異なる往時であれば 故障だらけで使い物にならない事は容易に想像できる。加速を運転手の感覚で自由に調整するというやり方も、自動車とは同じとはいえ、あまり自動車が普及していなかった日本においては違和感のあるやり方であろう(ペダルが強調されるが、マスコンハンドルに置き換えても状況は同じであったと考えられる)。この対応策として、加速度を一定にして、制御装置を簡素にしてしまうという方法が考えられるが、7.0km/s/sとかいう高加速では乗り心地が以上に悪くなる。そこで、制御装置の簡素化と旧来の路面電車と同等程度+αの加速力と、中高速域での加速の伸びの改善と台車装荷のモーターによる消音化という点で新技術を生かした日本版の高性能路面電車が生まれたわけである。
  ところで、可変加速を実現する複雑な制御装置は抵抗制御の際の話、電機子チョッパ制御、VVVF制御ではプログラムを少し書き換えるだけで実現するものである。だからやってしまえばという話は技術者の間では話題になる(いわゆる「ノッチの電流制御」である)が、PCCとそのライセンス車が普及した欧米では諸外国では当たり前でも日本ではなかなか実現しない。伝統とは怖いものだし、日本の電車技術が万能ではない証拠としてみてもいいだろう(輸出向け電車では当たり前にやっているので「製作できない」わけではない)。


10月2日補足

 PEのスレ、意外に長持ちしていて、いま論争になっているのはインターアーバンの定義の話。
 これ、いろいろと不毛な論争が繰り広げられているが、実は、アメリカ統計局が「インターアーバン」と「その他の電気鉄道」を区別しているから把握は簡単である(ドイツから来たばっかりの移民が結構いた20世紀初頭のアメリカ人は当時の日本人以上に几帳面な事も多い)。勿論、統計局の区分には路面電車然とした路線も含まれているのだが、そのあたりはアメリカの交通学者ヒルトンと財政学者デューによる「The Electric Interurban Railway in America」できちんと区分されている。彼らの区分をもってインターアーバンの定義として間違いはないだろう。その中では、キーシステムとサザンパシフィック鉄道のオークランド電車線、ゴールデンゲイトの北側のノースウエスタンパシフィックの近郊電車線は、郊外電車として参考程度に紹介されている。なお、パシフィック電鉄は「インターアーバンであるものの、都市高速鉄道的な性格を有す鉄道路線」という扱いである。


「アメリカ旅客鉄道史+α」トップへ

「作者のアメリカ鉄道雑談」表紙へ


2007年3月13日作成
     10月2日補足